my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

白い月

会社の帰り道、夕焼けが綺麗だったので携帯のカメラで写してみようと思ったら、全然無理だった(当然か)。淡いピーチオレンジとグレイがかったブルーの溶け合う空、淡いブルーに薄く浮かぶ白い月なんて、そんな繊細なものは携帯電話のカメラ機能に対して無理な注文もいいところだ。
それにしても空を撮ろうと思っても、なんて電線が多いんだろう、ということに改めて気づく。パリでは景観を損ねるという理由で電線は全て地中にあるというけれど、電線が目障りだと騒ぐ人が思うより少ないのは、わたしたち日本人が空を見上げることも彼らより少ないからなのだろうか。
朝の空でも夕暮れの中でも薄い輪郭を浮かべた白い月を見つけた日は、得をした気分になれる。


そういえば先週何気なく見たドラマで「夕焼けが綺麗だったら、それでいいとわたしは思えない」という台詞があったっけ。たとえばお金を稼ぐために働いて、疲れて帰る途中、夕焼けを見たら、それが綺麗で、今日一日が満たされた気分になる、そういうことで満足できる人じゃないのだという意味の台詞だった。
そう言い切れる若さが、眩しい気もする。痛々しい気もする。そうやって生きるのは、苦しかろうと思ってみたりする言葉だった。そしてわたし自身にもそんな風に思っていた若い頃があったような気もする。そうやって生きていた頃は白い月なんて、見ることもなかったように思う。