my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

この作家のこの作品

Bookバトンをつらつらと読んだりして、結構好きな作家が被っているのだけれど、作品のセレクトは微妙にわたしと違っていて、「ああ、なるほどな〜。この作家でもこの作品を選ぶのがこの人らしいなぁ」と思うことが多かったのです。というわけでつれづれなるままに好きな作家のこの作品、というのを考えてみたり。

http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1563_9723.html

青空文庫で読めるんですよね。文庫なら『晩年』に掲載されているのかな。スワの声すら出ないような悲しさに胸を打たれたというか。悲しみを越えて透明になっていく少女の姿が見えるというか。当時は全集で読んだのですが、あとがきで著名な研究家が明らかにミスリードしていたので、分かる人にしか分からない記述もありますが、それがまた太宰治の繊細さを表しているように思います。シンプルで端的で、冗漫なもののない文体、それでいて十分に叙情的。太宰治は言葉の匠であると思います。

人間椅子 (江戸川乱歩文庫)

人間椅子 (江戸川乱歩文庫)

突拍子もないことこの上ない乱歩のトリックですが、この発想はものすごいです。箱男ならぬ椅子男。そんじょそこらのストーカーの比じゃないです。明智小五郎シリーズなどの明るさ、華やかさがあるものより、『人でなしの恋』や『陰獣』なんかのねちっこさがたまらなく好きです。人の持つ醜い部分、恐ろしい部分を辟易することなく読ませてくれるのは、ある意味この突拍子のなさ故なのかもしれません。

夢十夜 他二篇 (岩波文庫)

夢十夜 他二篇 (岩波文庫)

漱石なら断然これ! 漱石にこんな一面があるのかと知ってぐんと好きになりました。第一夜の美しさが好きで、書き写してみたりしましたっけ。

新装版 69 Sixty nine

新装版 69 Sixty nine

限りなく透明に近いブルー』<『トパーズ』<『コインロッカー・ベイビーズ』<『69(sixty nine)』なんですよね。ある意味わたしが健康的な証拠なのかもしれません。というか劇的な状況は何も必要なくて、退廃的な諦めも甘美な痛みも究極のところ、個人的には必要なくて、ただそこに、村上龍という人の憤りがあればいいんだなぁ、なんて思ったりしてみるわけです。怒りがエネルギーになるタイプの作家としては最高峰の方じゃないかと思う。

掌の小説 (新潮文庫)

掌の小説 (新潮文庫)

本当に短い挿話の中でこれほどの空気を描けるのは、この人を置いて他にないのかも。少女の儚い美しさや語られない淡い思い、今一瞬一瞬の美がピンで留めるように描かれています。長編も美しく代表作なりの充足感があるのですが、どうもわたしは短篇の方が好きみたいです。

うーん、そういえばここに上がったどれも、短篇率が高いなぁ。