my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

さつまいものバター蒸し煮とビタクラフト

無水調理の偉大さを改めて知る。石焼き芋のような、じゃがバターのような。オーブンレンジの焼き芋コースではけしてできないしっとり感。読書のお供におやつに、ぺろりと平らげた。女子どもは芋が好きなのよね。

無水調理できるお鍋というのは密閉率や熱効率が高いので、当然お値段も高くなる。それでも何故わたしがビタクラフトを買ったのか、というのは、わたしにとって憧れの鍋だったからだ。その昔、小学生のわたしは共働きの母の帰宅を待ちながら、いつもテレビを見ていた。とある土曜日の夕方、テレビにはそんな腹を空かせた鍵っ子にとって異常な光景が繰り広げられていた。
料理天国」というその番組は、料理番組でありながらレシピなどは一切紹介せず、ただひたすら贅を尽くした見たこともないような料理がぎっしりと並び、芳村真理がお洒落なドレスを着て料理やシェフを紹介し、元相撲取りの龍虎がひたすら「んまいんまい」と食べるという、度肝を抜くような番組だったのだ。今のようなグルメ番組のなかった当時、「主婦のちまちましたお料理なんて、相手にしてませんことよ」的な「どうだこの世にはこんなハイソな料理があるんだぞ」的な贅の尽くしようは反感を抱くなどというケチな心さえ起こさせないほど圧倒的だった。結婚式だって洒落たレストランだって出てこない、どうやって作るのかも想像できない料理の数々。そんな番組を母親の帰りを待ちわびるひもじい小学生が涎を流しつつ、口をあんぐりさせて見ていたのである。
まるで魔法のように芸術的な皿が繰り出されるキッチンスペース。そこに一際輝いていたのが、シェフたちの使うピカピカしたステンレスのお鍋やフライパン。大小様々だけれど、どれもシンプルでプロユースで機能的に見えた。そして全てに黒いロゴが見えた。それがVita Craftだったのだ。

大人になって、ビタクラフトを買ったとき、料理天国を見ていたあの空腹とテレビの向こうの眩しいほどのご馳走の山を思い出していたことは言うまでもない。三つ子の魂百まで。食い物の恨みは恐ろしい。サントリーの戦略に長年かけてはまっていたらしい。