my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

距離

優しさにふれたなら、近づきたいと思う。距離を縮め、おそるおそる歩み寄りながら、体温を感じる距離まで近づいて、いつしか相手を知ったような気持ちになっていく。そしてふいに手を伸ばして何かにふれて、驚いて後ずさりする。その感触が、これまで感じていたものと違っていたと言うことに傷ついて。
わたしたちはいつもそうして、人との適切な距離を測って生きているのかもしれない。何度も互いに無意識に確かめ合いながら。
そして、想いが近づく前とは変わってしまったことに驚き、傷ついて、寂しく想いながら、ほんの少し、後戻りしてみるのだ。他に術がないから。いやひとつだけあるけれど、それは自分に嘘をつく、という悲しい道しかないから。
それでも、昔抱いた思いは嘘ではなかったと、自分を褒めてあげたい。あのときのわたしは真実であったと。近づいたことも楽しかったことも、そこにはあったのだ、と。
微笑んでみよう、か。その微笑みは昔日のものではないのだと言うことが、伝わろうとも、伝わらなかろうとも。そしてまた、優しさにふれたなら近づきたいと思う心を抑えることはすまい。人を知ることは傷つくことだとわかってはいても。