my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

パーフェクトな彼女とシステム手帳

ここ数年、手帳を使っていなかった。仕事の進行管理やスケジュールは会社のパソコンのカレンダー機能に書き足し、プライベートは携帯電話のスケジュールにメモることで事足りてきたからだ。しかし、娘が小学校に上がってから、学童クラブの行事も多いし、PTAやら学校の予定もあるし、ついうっかりダブルブッキングなんてこともあるので、再び手帳を使おうと思い、システム手帳用のバインダーノートを今年は買った。手で文字を書くことは懐かしくて新鮮で、スムーズに記憶に残っていく気がする。

システム手帳は、友人が、わたしが再就職したときに、贈ってくれたものだ。当時ワーキングマザーのなんたるかすら全く分かっていなかったわたしに、バリバリの大手広告代理店勤務のキャリアウーマンでしかも単身赴任で一人で子育てしていたという信じられないくらいスーパーウーマンな彼女は保育園のことや、その申請に必要な手続きなど、色んなことを教えてくれたのだった。
「ねえ。わたし新しい生活の門出にお祝いしてあげたいの。働くとなると手帳がいるよね。どんなのが好き?」
そう聞いた彼女。ある日慣れない保育園と職場の往復に疲れ切った夜に届いたものがシステム手帳とボールペンとシャープペンだったのだ。中には、カードが入っていた。
「だいじょうぶ。新しい生活、きっとうまくいきます。だって○○(高校時代のわたしの渾名)だから」

この言葉は噛み締めるたびに、何か不思議な力を与えてくれるような気がする。もうこれ以上頑張れないと思うほど疲れていた頃に、けっして「頑張って」と言わない彼女の優しさ。信頼感。母が「あの子とあなたは本当の友達ね」と言ったことを思い出す。多分、傷の舐め合いとかなれ合いとか、そういったものを一切彼女との間に感じなかったからだろう。
実のところわたしは、パーフェクトな彼女の十分の一も立派じゃないけれど。彼女が思うほどわたしは全然全くちっともしっかりしていないけれど。しんどいといつもほざくのはわたしで、彼女はいつもどんな時も愚痴一つ零さない強い人だ。誰ともそつなく付き合い、話題は豊富、多くの人に魅力的な自分をプレゼンテーションすることができる才能もある。そんな彼女がわたしを信頼してくれていると言うこと、そのことだけは嬉しいと思う。あなたに好かれた自分が誇らしいけれど。いつかあなたと肩を並べられるくらいの女になりたかったけれど。

今やわたしは心を許した人に愚痴をこぼし甘えまくる、とんでもなくだらけたやつになったのであるが、そしてそのことを些かも恥じない開き直った女になったのであるが(だってその方が楽なんだもーん)、彼女はどうやってパーフェクトじゃない自分になる時間を作るんだろう、と時々思うのだ。誰かに甘えられているといいな。完璧じゃなくても、いや、完璧じゃないからこそ、人は人を愛しく思うのだから。
できないなんて言い訳を一切しない人だから、つらいなんて絶対漏らさない人だから、だから心配なんだよ。弱いあなたでも、ダメなあなたでも、いいんだよ。


そんなことを思いながら5年ぶりに手帳の中身を入れ替えた。貰ったときは娘が悪戯書きをするので使えなかったけど、今年はめいっぱい使うからね。HAL。