my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

There is no help for it.

人を知ることは、樹に触れるようなことだと思う。と、いつかあなたは言った。枝振りを愛で、幹に触れ、葉を眺む。そして、やがて、その根を知る。
その見えない根こそがいかに肝要であることか。わたしたちはそこでどれほど、溜息をつき、背を向けて立ち去ってきたことか。遠目には心地よく風にそよいで誘っているように見えたとしても、その危うい根を見て、「ああ、違う」と、目をそむけてきたことか。たわわに実も花も葉も抱えながら、倒れそうになっている、そんな悲しい根に失望を抱えてきたことか。
そんな話をしたね。
誰も彼もを受け容れることはできないと、責めるわたしを、しかたがないんだよと、繰り返しあなたは言った。そう、しかたがないの。今はもう分かる。だって、ほんとうにしかたがないのだから。

見えないからこそ、知りたいと、触れたいと、思える。けれど通じ合えなくて当たり前であることを、忘れてはいけない。