オーデュボンの祈り
伊坂幸太郎著 『オーデュボンの祈り』*1を読み終えた。
文体や人物描写や謎解きに、若干味わいというかディテールというか、まろやかさが足りない感じはあるものの、そんなことはさて置いて…
心に風が吹くようなラストが良い。うん。
欲を言えば、登場人物がもっと魅力的であって欲しい。どの人も欠かすことのできない役割を担った、特別なキャラクターなのに、どの人物像もいまひとつ愛しい感じとか、人としての息づかいが感じられないのだ。ミステリーに限ったことではなくて、すべからく小説は「人」を描くものだと思うから、人物が見えてこないと、その物語の味わいや厚みは減ってしまう気がする。
バラバラだったジグゾーパズルのピースがつながるラストも、もっともっと広がりが出たような気がして惜しい、と思った。
*1:新潮文庫。 ISBN:4101250219 作者29才のデビュー作。オーデュボンとは実在の学者の人名。