my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

Rainy Blue

雨というIDのくせに、雨が苦手だ。梅雨の季節はいつも気が滅入ってしまう。生まれ故郷には梅雨がなかったから、上京して最初の梅雨は、訳もなく気持が沈んで、大学の教室の窓からグレイの空とスロープを上り下りする傘の模様を恨めしく眺めていたのを昨日のことのように思い出す。
自分の行く先なんて、まだ何も描いていなかったあの頃から、梅雨は好きじゃなかったんだなと思いだす。

社会人1年生の頃、イギリスから取引先の客人が1週間来た時も、梅雨だった。「このところずっとお天気が悪いですね」と言ったら、「イギリスの気候と似ているよ」とその人は言った。それを聞いて、イギリスにはあまり行きたくないなと思った。
ビルの窓から見える鬱蒼とした雨の皇居と、どこまでも重く垂れこめた空と、窓ガラスを伝う雨粒を今もまだ覚えている。お天気の日にははるか向こうに富士山が見えるんですよ、と言ったけれど、彼はついに富士山を見ることはなかった。

そもそも、傘を持つことが嫌いなのかもしれない。片手がふさがってしまうことや、建物に入った際の傘の処理や、喫茶店や電車など適当な置き場所が見つからないことや、どこかに置いて忘れてしまうかもしれないという懸念や、そんなこと全てを面倒と思うのは、降雨量の少ないところで生まれ育った所以なのだろうか。それとも単に生来のものぐさ故なのか。

脚とストッキングの間に雨がじわじわ染みてくる感触や、巻いてもいつの間にやらストレートに変化してしまう髪の毛や、泥がハネてしまうから淡い色の服が着れなくなるところも、制約が増えて出かけるモチベーションを下げるかな。

部屋干しの洗濯物(乾燥機の設置スペースがないため購入できなかった)を眺めながら今日もため息をつく。綺麗な傘やかわいいレインブーツも気を晴らしてはくれない。雨が憂鬱にならない処方箋はどこかにないものかしら。