憑神
- 作者: 浅田次郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/04/25
- メディア: 文庫
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またまた浅田次郎なのですが。なんだかいまいち元気がないときはこの人の本を読むと相場が決まっているのです。わたしにとって、浅田作品はド定番、外れナシ!なので。
徳川の代も翳りを見せ始めた世。才はあれども時代遅れ、不遇で貧乏なお侍さんが酔った弾みにひょんなことから見つけた祠。気まぐれに手を合わせたが最後、次々と現れる霊験あらたかな憑神様たち。大店の旦那然としたのは貧乏神、大横綱の貫禄の疫病神、最後に現れたのは・・・?
笑って泣ける、さすが浅田次郎。相変わらずいい男書かせたら世界一。痺れるぅ。
そもそも神様の様子が我々の想像する「いかにも」と対極にあるというのが洒落ている。現実とか真実なんて、そんなものだと思うのだ。そのくらい、イマジネーションなんて、自由だと思っているそばから縮こまっているものなのかもしれない。その心地よい裏切り。
世に蔓延した鬱屈と、閉塞感は読んでいて自然と今の世にも繋がる。頑張ればどうにかなるわけではない、誰のせいでもないけれど、運が悪いと言われればそれまでだけれど、「世の中まちがっとる!」と叫んでも空に吸い込まれていくようなやるせなさ。
人は儚く、神にとってはとるに足らない存在だけれども、志だけでご飯を食べてはいけないのだけれども、人は結局、自己満足というものを追い求めて生きていくのだろう。
『極大射程』のスワガーが、アメリカのカウボーイ像ならば、日本の侍は、こういう浅田節の似合う男なのだと思う。男の人ならこういう生き方は、絶対嫌いじゃない筈。
ああ、どんなに平等と言われて育ってきたところで、わたしは女で、男とは決定的に違う生き物なんだな、と思わされる、そんな男の生き方。
ままならない世の中でも、どう生きるかは、せめて自分で決めたいよね。かっこつけたいよね。うん、愛らしいほどに阿呆らしくて、かっこいいです。せめてピカピカに輝いてきてね。そう男の背中に呟きたくなります。