my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

やさしいひと

妹が研修で上京してきた。ホテルに三泊するのだが、今夜少し時間がとれるので、とのこと。
折しも仕事が立て込んでいて、とても早くは帰宅できそうもない。連夜遅いわたしの状況を分かってくれているので、「お姉ちゃん、きっと今は仕事するときなんだよ。ご飯食べさせておくね」と言ってくれた。
娘と妹の待ち合わせ場所を決めて、落ち合えるようにしてもらった。
妹とあまりゆっくりできないのは残念だけれど、また会えるだろう。家族だから、こんな我が儘も許して貰える。

夕方、娘から「これから行ってくる」と連絡が入ると、わたしを励ましながら一緒に仕事をしてくれていた税理士さんが「ましろさん、お子さんいるんですか?」と驚いた顔で聞く。
「あら、そう見えませんか?」
「一人だと思っていました」
よく「生活臭がない」とか「所帯臭くない」と言われるけれど、本当にわたしは「見た目負け組」なんだな…。
「バツイチ、シングルマザーってやつですけどね。心外だわぁ。わたしの一番好きな役割はお母さんなんですよ〜」と微笑む。
「それはいけません。早く仕上げましょう」と途端にキビキビ片づけ出す税理士さん。
「僕、娘大好きですから。娘と一緒にできるだけいたいんですよ。だから遅くまで待たせちゃダメだ。よし、後はこれとこれと家でチェックします。明日も朝から来ますよ」と笑顔。
「えーん、優しい。今一瞬、惚れそうになりました。…でもお父さんだからダメ(笑)」

(以来遅くまで残業する同僚と二人、ことある毎に「あの税理士さん、いいよね」「ですよねー」「ああいう人にどうして出会えなかったんだろうねえ」と薄幸な女二人で言い合っている。)

帰宅すると、家で妹が待っていてくれた。
娘とご飯を食べ、本を買ってくれたらしい。
雨の中を妹を駅まで送る。
「ごめん、ゆっくりさせてあげられなくて。色々悪いねぇ」
「仕方ないよ。お姉ちゃんも大変だし。少しでも時間があるなら、会っておきたいじゃない。それより来た道を往復させて悪いわね」
「いやいや。妹と雨の中を並んで歩くのも乙なものじゃない」

改札で妹を見送った。
明日もまた、しんどいけれど、優しい人の優しい思いがあるから、頑張れるところまで頑張ろう。