my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

最大で最小

電車に乗っている時間は大幅に短縮されたのですが乗り換えの回数は増え、階段は多いし、駅からも歩くし、健康に良いはずが、夜になるともう底マメが痛いので、このままでは健康を害する、と思い、とうとうお昼休みに奈々ちゃん(id:hisamura75)から聞いた靴屋さん*1に行きました。見ると古い靴屋さんで、なにやらただ者でない気配が漂っています。
おそるおそる薄暗い店内に入ると誰も客がいなくて、以前テレビで見た細野さんが、店内を物色しているわたしに一言。「ヒールの高いのがいいの?」
うわ、さすがわかってる!と思いつつ「はい」と答えると、じゃあ、これかなぁ、と棚から出してきてくれて、「ちょっとここに立って」と足の長さを計測をする、5ミリ刻みに目盛りのついたプラスチックの板を差し出しました。ワイズは計らなかったのに目測で持ってきてくれた靴が、なんとフィットすることか。土踏まずのアーチにしっかりふんわりあたるクッションが気持ちいいし、踵を上げ下げしてもカパカパしないのです。歩いても7.5センチヒールとは思えない楽さ。こんな靴はじめて履いた〜と感動の声をあげてしまいました。

くりの深いハイヒールを履いていたので、ホソノの靴と片足ずつ履いて、露出した部分の足が細く見えるのはどっちか見比べたり、足の中心というものを考えていない靴との違いを説明してくださったり、ホームページで読んだなぁ、と思いつつも、拝聴。そこには「うちの靴は余所とは違う!」と言う、自分の作ったモノに対する自信と誇りが感じられました。

キャッシャーの奥には、お仕事してます!的な作業場があってかっこいい職人さんがもくもくと仕事しています。かっこいい、という表現は適切ではないのかも知れませんが、お洒落とか、派手とかそういうのを一切排して、淡々と作業する迷いのない姿、というか、本物の匂いというか、そういうものを感じました。
神田藪蕎麦に行ったときも作業場の清潔感と職人さんのたたずまいにやられてしまったわけですが、どうもこういう職人さんの物言わぬ寡黙な作業ぶりには、つい「かっこいい!」という全く個人的な主観だけの表現を使ってしまうわけです。それにしても、自分の仕事に自信を持っている、というのは声に出さなくても、働く姿そのもので十分に伝わる、そんな気がします。

「ちょっと待ってて」と靴を持っていった細野さん。スリッパで待つこと数分。「本当はお勧めしたくないけれど」と細野さんはわたしの履いていたハイヒール(イタリア製で、3万円ちょいくらいなので捨てられなかった…)にも土踏まずのアーチにクッションを入れてくれました。(しかし、そのとき、作業場のほうで細野さんになにやら反論しているかのような職人さんの声が聞こえたような…。よく聞こえなかったのですが、今思うとあれは、只のサービスなんてやりたくないとかうち以外の靴はいやだとかいうのじゃなくて、くりが浅いのに余計にあさくなってしまうとか、そういう設計上の話だったように思う。)

結果、今日わたしは生まれて初めて23.5cmの靴を買いました。23.5cmのワイズA。*2人生初の最大長にして最小幅です。Aて。こりゃ普通の靴屋にはないわな。とほほ。

説明中何度も細野さんが「あなたの足は細いから」というので「いや、太いです…」と言うと「いや、足の幅は細い!」と明確に指摘してくださいました。要するに脚ではなくて足なのね。そりゃそうだよ、と納得(苦笑)。逆なら良かったのに。
それにしても1㎝も縦に縮められていたわたしの足は一体どうなってたんだろう……。

ともあれ、わたしの足はそう変形していないので、今から足にあった靴を履けばだいぶ改善されるとのことでした。なるべく切り替えていこうという決意を漲らせて店を出ると、見送る職人さんの笑顔が優しく感じられました。

*1:カルツェリア・ホソノ→http://www.hosono.co.jp/index.html

*2:細野さんの「あなたの足は23.5Aでなければ、23.0C」と言うのを聞いて、ブラにおけるアンダーとカップの関係みたいだなと思いました。分かる人だけ分かってください。