my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

祝福


あの冬を思い出してみよう
冷たくて 苦しくて 悲しいと思う心さえ
麻痺していたような
あの冬を 思い出してみよう


あの夜を思い出してみよう
沈む夕日に 嗚咽を漏らし
凍てついた闇に浮かぶ 切り落とされた爪先
冴えわたる銀の月を友として
ただ我が身を抱きしめていた
独りの夜を


緩やかに溶けていくのは
根雪にも似た 胸の奥に痼る結晶石
柔らかくくるんでくれたのは
春の陽射しにも似た 温かな手


ここにわたしがいること
ここにあなたがいること
なんて当たり前の奇跡


華やいだ街のイルミネーションも
クリスマスを待ちわびる人の笑顔も
まるで わたしを祝うようにすら見える

ただ 尊いと思える 冬の一日