my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

オフクロの味

「ママ、肉じゃがが食べたい」と言われたので肉じゃがを作る。
平日は大急ぎで料理にかかるため味が染みないので煮物はあまりしないのだが、休日あたたかな煮物が食卓に上がるのは冬という感じがして好きだ。
肉じゃがをつつきながら娘が言う。
「ママ、肉じゃがって『お袋の味』なんでしょ?」
「うん、良くそう言われるねえ。」
「オフクロって何?」
何処でこんな言葉を覚えるんだと言うくらい色んな言葉を覚えてくるくせに、なるほど「おふくろ」は知らないのか、と苦笑しながら「お母さんってことだよ。お母さんを思い出すようなお料理をお袋の味って言うのかな」と教える。
「ああ、そうなんだ。だってわたし、ママって言うから*1。ママの味だよね。」
「それだとミルキーだねぇ。」
「ミルキーは何でママの味なの?」
「おっぱいの味に似てるんじゃないの?」
「似てる?」
「似てない…と思う。*2
「オフクロは肉じゃが味でママはミルキー味。……うーん」
納得していない娘。さもありなん。これはレトリックの妙というやつよね。
そんな話をしながら明日の分もと四人前作ったのを一日で平らげてしまった。娘が大人になったとき、何が彼女の「お袋の味」になるんだろう。いくら味覚の渋い子で、ケーキよりハンバーグよりカレーより、マグロの刺身と胡瓜と味噌汁と真っ白いご飯が大好きだからって、刺身じゃ母の味にならないしなぁなどと思った。

*1:正確には、本人の都合によって、お母さん、母ちゃん、おかぁ!と呼ぶ。

*2:実は確認したことがある。薄甘く生ぬるく少し鉄臭い味。血液から出来てるから当然かも知れない。