my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

有名ラーメン店と改装の法則


梅雨入り。降ったりやんだり、また降ったり。


歯科検診で、娘のかかりつけの歯医者さんが校医さんになった。実は保育園時代、娘と同じクラスだった子のお母さんなので、気楽なのだが、そこはプロ、やはりお目こぼしはしてくれず*1、しっかり虫歯にチェックされていた。今月末にはプールが始まるのでそれまでに治療しておこうと重い腰を上げて、通うことにする。会社が上がった後、娘に電話して呼び出し、駅と自宅の丁度中間地点なので、その病院前で待ち合わせる。何故かこの待ち合わせが娘は大好きらしく、呼び出すとほいほいと出てくる。

娘が診察室に入ってまもなく「あがががが」と、盛大な声がする。最初に通い出したときは借りてきた猫のようだったのに慣れてくると喧しいこと。前回神経を抜いたときの方が絶対にしんどかったはずなのに、今回その神経を抜いた歯の治療に「音が怖い」と文句を付けている。


治療が終わって、近くのラーメン屋さんを覗く。小さなカウンター席しかない木造の店で、目立つ作りではないが、実はここは知る人ぞ知る名店なのだった。ここに住み始めたときから気になっていたのだけれど、入り口に小さく貼られた「子供さんはご遠慮ください」の文字にめげて入れずじまいだった。
しかし去年の改装を期に、何故かその張り紙は姿を消し、今日行きがけに店内に娘くらいの子供連れがいたのを目撃したのである。

「ここ入ろうか?」
「いいの?」
「もう張り紙もないし、さっき子供がいるのを見たのよ」
「じゃあ、食べよう! 食べてみたかったの」

店内に入ると濃ゆい出汁の匂い。どうやらここは煮干し出汁を使っているらしい。こういう店にお子様向けなどあるはずがないと諦めていたら、なんとメニューに「お子様ラーメン」の文字まで発見。わたしはお勧めを聞いて紫蘇塩ラーメンにする。


とろりとした白濁系の汁に刻んだ紫蘇が浮いている。紫蘇の香りと塩味のラーメンは意外に合う。麺が丁度良い堅さで、なんとも美味しい。わたしの好きな味の絡みやすい、縮れていない細麺でしこしことした歯ごたえ。チャーシューも脂身がとろんとしている。ただお汁は一口目以降はちょっと塩辛いのが残念。
娘のはとろりとしたお醤油味。チャーシューは同じ大きさ。付いてきたのはパック入りのジュースだけ。チェーン店のお子様セットのようなおもちゃや見た目だけのための付け合わせなどが一切無いところが潔くて好ましいし、ラーメン重視の感じが量的にも娘に向いている。お汁を味見をしてみるとこちらのほうがコクがあってまろやかさもあり、個人的には好きだった。娘はチャーシューを一口食べた後「美味しい」と大事に残りをお汁の下に沈めていた*2


どういう心境でお子様OKになったのか分からないけれども、また入れるお店ができて嬉しい。ただ、なんとなく、改装前のお子様お断りと書かれた、あの入りにくそうな鬼気迫る店構えだった頃のほうが、美味しかったんじゃないのか?という気がしている*3。そしてそんな予感は、味わったこともないのに確信に変わっている。ねぇ、そうでしょ。そうなんでしょ。きっとそうだ。そうにちがいないっ。

*1:実は4月にも通ったのだった。で、たいしたことがないと言われたのに、健診となるとプロの目が細かなことも許さなかったらしい(笑)

*2:伊丹十三監督の映画『たんぽぽ』で山崎努がチャーシューに「後でね」と語りかけている姿を彷彿とさせた。

*3:かの札幌の名店「純連」だって小じゃれた店になったら、味が変わった、いや、何かが変わった!と思っている…。