my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

彼女の戦利品

駅前の玩具屋さんの店先に並ぶ数十種類のガチャポン。娘を連れて行って「さあ、どうぞ」と選ばせる。意気揚々、ご機嫌な娘。何故って、キリがないので最近ガチャポンは禁止していたのだ。が、今回は約束なので仕方ない。


なぜこのような約束をしてしまったかというと、話は一週間前に遡る。
深夜、わたしが洗面所に行くと、足下に気配が。夏の闖入者、黒いアレがいたのである。実は数日前にも風呂場近くで発見し、自分のテリトリーが誰かに侵されているという恐怖の数日を送っていたのだが、手を汚したくないわたしの願いとしては「カブトムシやコオロギは寵愛されるのに、あなたは何故嫌われるのか。命に貴賤はないのにねえ。今回は見なかったことにするから、どうかこのままどこかへ行ってください。いや、いてもいいけど、私たちの目の前には出てこないように生活してください。」と念じていたのだった。視線を感じたり、気配を感じたりするくらいだから、きっとテレパシーも通じるだろうと思った、いや、思いたかったのだ。その切なる願いが通じたのか、ゴキちゃんはおとなしく退散してくれたと思っていたのだが、やはりそうではなかったらしい。
わたしは部屋にとって返し、殺虫剤を持ってきた。気分はエイリアンと戦うシガニー・ウィーバー、もしくはT2のリンダ・ハミルトンである。
「約束を破ったのは、あなたなんだからね!」と、最初に殺生の言い訳をする。ゴキちゃんには約束した覚えはないのであろうが。後で思い出すと自分でも可笑しいのだが、何故か「失礼します!」と一礼*1してから、至近距離まで手を伸ばし、スプレーを思い切り噴霧した。しゅうううう。
すると、ゴキちゃんはものすごい早さで移動し、娘のランドセルに隠れようとする。そこで更に多量のスプレーを噴霧する。相手はじっとしておられず、居間の方に逃げる。追い続け噴霧し続ける。そして本棚と壁の隙間に逃げ込んだので、もうスプレー使い切ってもいいと思うくらい、噴霧し続けた。気配が消えた。
その夜、本棚を動かす気力もなく殺虫剤臭い部屋で寝た。翌日、娘が帰宅してから、事の事情を話す。
「ママ、触覚は長かったの?」
「えっ! みんな長いじゃない」
「いや、触覚の長いのは雄で短いのは雌だよ」
「へぇぇ」(トリビア風)
「それに雌だとね、お腹にカプセルが付いているの。それを死ぬときに体から離すんだよ。そこからね、49匹*2も生まれるんだよ」
「げぇぇぇぇぇ」(20げえ…。)
「でね、ゴキブリっておしっこするとき、片足上げてするんだよぉ!」
「・・・・・(ほんまかいな)」
「だってトリビアでやってたもん!」
「そ、そうなの?(なんか信憑性がありそうな)」
「楕円形の虫はみんなそうなんだって!」
「甲虫類って事かなあ? それはそうと…、あのへんで死んでると思うんだけど、ママ入れないからさぁ〜、ちょっと見てみてくれないかなあ」と申し訳なさそうに申し出ると、意外にも「いいよ」と言う。
隙間をのぞき込んで「うわっ!」と言う声。「気持ち悪い〜」
「片づけてくれないかなあ…」
「いいよ。ご褒美くれる?」
「…わかった。ガチャポン*3でどう?」
「やったっ! やる!」と即答。
かくして、スーパーの袋とティッシュの箱を持ち、隙間から手を伸ばす娘。
「ママ、赤ちゃんもいるよぉ!」
「…わかった。もう一回追加しよう」
「ママ、カプセルもあるよ。もう一回は…?」
「それは駄目。赤ちゃんとカプセルで1回分。やりたくないならやらなくていいよ。」
諦めて本棚を動かす覚悟をしていた頃、娘が「とった!」と声を上げた。かくして今日のガチャポン解禁となったわけである。


余談ですが、念のため検索してみると、「カブトムシは片足を上げておしっこする」というトリビアがあった。なんだ、カブトムシじゃん。87へぇで金の脳をもらっていた。カブトムシは糞も液体で、おしっこと一緒に排泄するとか、他の昆虫と違い、お腹に肛門があるとか、オス、メス両方とも片足を上げるといった補足情報も入手。へぇ〜。

*1:エイリアンに一礼するリプリーはおるまい…。

*2:何故にきっかり49匹と断言するのかは謎。

*3:数週間前からやりたいガチャポンがあるとねだっていたのだった。