my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

新年会


大学時代の友人たちと、久々に新年会をすることになった。この冬初めての雪の中を、娘の手を引いて大学の傍に5年ほど前に建てられたというホテルに向かう。
彼女たちと会うのは本当に久々だ。就職してしばらくは会っていたものの、次々に結婚し、ここ数年はいつの間にか年賀状のやり取りだけになっていた。取巻く環境も変わり、それぞれに違う時間を生きていて、みなどんな風に変わっているのかと少しドキドキしながらホテルに着く。みんなの顔を見て、不思議なことに、何も変わっていない気がする。会えば一瞬で時間を飛び越えて、学生時代の続きになる。滔々と流れるおしゃべりに話が弾む。

おとなしかったけれどどこか芯があるなと思っていた友人は、二児を育て、社宅付き合いをこなしながら陰で資格を取り、見事再就職してワーキングマザーとなった。一見奔放に誤解されやすいツワモノ風の友人は、その実とても繊細で、専業主婦となり、元気な男の子と女の子とお母さん付き合いに翻弄されつつも、沢山本を読み、自分の時間を大事にすることを忘れていない。みんなより遅めに結婚した友は、新婚生活を楽しむ間もなくお母さんになって、夜泣きや離乳食に悩みながら、でも出産前と変わらない体型と美貌を保っている。

そして一番素敵だなと思ったのは、どちらかというとあまり目立たなかった友人。にこにこ話を聞いている姿は、驚くほど笑顔が柔らかくなり温かなオーラが出ている。まだお子さんには恵まれていないけれども、彼女にとって結婚は、とてもいい安定感を与えているんだろう。彼女を見ていると「結婚は人生の墓場」だなんて言葉はとんでもない、と思う。ああ、綺麗になったなあ、とその笑顔に見蕩れてしまう。

別れ際彼女はわたしに「昔も綺麗だったけれど、しなやかに綺麗になった、っていう感じがする」と言ってくれた。照れ屋のわたしが、コンプレックスだらけだったわたしが、素直にありがとう、と笑みを浮かべていた。「あの頃よりも今の自分好きなの。楽じゃないことも、つらいこともあるけれど、嫌なことは何もしてないから。」と答える。

帰り道、みんなで大学近くの地下鉄の駅まで歩いた。センター試験の余韻が残る夕暮れのキャンパス。見慣れた建物と、見慣れない建物と。それでも、受験生の様子は今も昔も、何も変わらない。そんな気がする。少しずつ様変わりしていく街と、そして少しずつ変わってきた私たちと。それでも変わらない何かがある。帰宅すると彼女からのメールが入っていた。

若くてじたばたしてた時代もそれはそれでいじらしいけれど、あの頃より自分らしくいられるし、私も今の自分が好きかな。仕事で短大生に接するのだけれど、彼女たちは自分がもう若くないとか、20代だからおばさんですとか半ば本気で言うの。でもみんなと会っていると「年をとるっていいじゃない!」って思います。日々はいろいろあるけど大丈夫!って思いました。今度あの子達に『私は今の自分のほうがラクになったし好きよ。友達もますます素敵になっているし、結構楽しいわよー。』って言ってやろう(笑)。

帰宅して、娘が言った。「楽しかったね! 綺麗な人ばかりで嬉しかった!」そんな風に見えたのか、と、嬉しくなる。時間は残酷だなんて誰が言ったのかしら?花の命は短いと誰が決めたのかしら? 流れていった時間は密やかで優しい。まるで今日のふわふわと落ちてくる小さな小さな雪のかけらのように。