my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

ブラックジャックによろしく

見終わって、すぐに録画してあった「ブラックジャックによろしく」を見る。
前回から半年たち、また英二郎に会えるのがすごく嬉しい。
今回はガン病棟編。延命治療と終末医療と言う難しい問題だ。
主人公英二郎の指導医は抗癌剤の使用に意欲的な庄司。英二郎の受け持ちの患者にすい臓癌が再発し、抗癌剤の効果は見られず治癒の見込みはない。転院を勧める庄司に対して、今回も英二郎の煩悶が始まるのだが・・・。

どうしても気になることがひとつ。このドラマで重大な役どころである、抗癌剤使用を否定する立場の宇佐美医師を石橋貴明が演じているのは、ものすごく違和感がある。どうしてもコントっぽく見えて、重たいドラマの中でそこだけ不自然で気が逸れるのだ。
多分以前の高砂医師に笑福亭鶴瓶というキャスティングが大成功だったから、今回もお笑いでのキャスティングにしたと思うのだけれど、違う〜ぅ!と叫びたい気持ちだ。
鶴瓶演じる高砂医師は、一見とっつきにくい冷たさや親しくなったときの人情味やNICUというやり切れない命の現場にいる者の奥底に秘めた悲しさがとてもリアルでこの人以外考えられない配役と思えたほど見事だったけれど、石橋貴明の冷たい顔やかすかな微笑みは不自然で、かっこいい台詞はコントっぽい。周囲が巧いだけに、浮き立つほど不自然なのだ。
役者に必要なものは、器用さでも経験でも表現力ですらもなく、ただひたむきに役の心の襞を自分のものにすることなのかもしれない。

それにしても、いつ見ても、妻夫木聡の演じる主人公の英二郎は好きだ。懲りもせず本気でラストで一緒に泣けてしまう。
一見温和で柔和なくせに、芯はどうしようもないほど頑固で強情で融通が利かなくて、いつものた打ち回って悶々として、それでもいつも自分のできることをどんなに周囲に呆れられても貫こうとする。
あの、一生懸命自分に誠実であろうとする強さが好きだ。どんなに迷っても諦めることのないしなやかな強靭さが。
それは表を威嚇するための強さではなくて、弱い自分をとことん見つめ続ける人にしかない強さだからかもしれない。
それがたとえ他人に受け入れられなくても、いつも患者の心に添おうと、無力な自分をかみ締めながら、マニュアルにない道を模索し続ける。
こんな人には滅多に出会えないのかもしれないけれど、でもこんな男の人がどこかにいて欲しいなあと見るたび本気で思うのであった。