かなしいひと
逃げるなら この世の果てまでお逃げなさい
陽の差さぬ 奈落の底へとお逃げなさい
永い永い旅路へと もう歩けぬと思うまで 二度と立てぬと思うまで
逃げて 逃げて 逃げなさい
月のない砂漠を越え 命のない森を抜け
全身全霊かけて お逃げなさい
その歪んだレンズを壊しなさい ありのままを見つめなさい
狂いそうになるまで 目を逸らさずに直視し続けるのよ
その古く馴染んだ毛布を払い 己で作った檻から出て
一掬の涙を絞り 己が瞳を洗うのよ
本気で 本気で 逃げるのよ 何処までも 己の影すら断ち切るように
誰も来ない地平の果てへ 誰も届かないこの世の果てへ
かなしいひとよ そうでなければ きっとあなたは気づかない
同じ過ち 繰り返すだけ
なんてかなしい かなしいひとよ