my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

He said "Look forward"

きっかけは信頼している人の転職活動だった。その人がいないなら、私も保たないと思っていた。
日々の波を泳ぎ切ることが精一杯なのに、次の波は渡りきる自信がなかった。新しい上司が来たらバトンを渡そう、そう思っていた。
履歴を汚すのはイヤだ、とか、ボーナス前に辞めるなんて利口じゃないのではないかとか、ここで退職は無責任にならないかとか、自問自答したけれど、不安な要素は山ほどあり、未来は見えていなかった。がむしゃらに泳ぎ続ければ何とかなるのかもしれなかったけれど、それは未来永劫できることじゃないと分かっていた。ただ、軽率にしたくない、という気持だけが私を留まらせていたに過ぎない。
トントンと道ができて、ある会社のオファーを受け容れることにした。タイミングとは妙なものだ。先に出ていくはずの彼は悩んだ末に留まる決意をした。体調も精神的にも不安を抱えていた彼は、負荷のかかるはずの転職は今ではないと判断したのだ。

退職はすんなりとはいかないだろうと覚悟していたのに、Family matter*1ということになり、あっけないほど簡単に受理された。その人は何も言わなかったけれど、きっと後押しをしてくれたのだろう。「何にもしてないよ」ととぼけるところなんて、この人、本当に大好き!と思ってしまう。

取引先には残念がっていただいたり、中には泣いてくださった人までいた。最後の一週間は、社内の色んな人とランチを一緒にしたり、連絡先を教えあい、「もっと早くに仲良くなっておくんだった」「一緒に仕事できて良かった」「また会おう」という最高の退職金を貰った。信頼している同僚に時々生存確認のPingを打つ約束をした。仕事はシャレにならないお寒い状況であったのに、人との出会いは今までで一番最高だった。

スタッフに毎日をメンテナンスしてくれている地道な努力への感謝のメールを送り、HUGをして、ボスと「今度ゆっくり飲もう」と握手した。
明日どうなるかなんて分からない。
でも、「長く安心して勤められる」会社がないのなら、どこへ行っても生きていけるスキルを身につけるだけだ。次のところでやるミッションは明確。欲しいスキルが得られることも分かっている。だから、それでいい。

帰宅するとSeniorの子から「一緒にお仕事できて感謝しています。考えさせられ、自己嫌悪になったりしたけれど、教えられたことを胸に頑張っていきます。また会えることを楽しみにしています」というメールが届いていた。そう思って貰えて、こちらこそありがとう。
モチベーションとか、その人を探ることとか、見えないモノを扱うからこそ、正攻法など無いからこそ、マネジメントは面白い、と、改めて思った。そしてもっともっと、強く優しく大きくありたいと思った。

夜携帯にメールが入った。subjectは「ありがとう」。本文はなし。
こちらこそ、あなただから頑張ってこられたよ。できる限り頑張ったつもりだけど、まだまだ力不足でゴメンね。
May you be fine.

当たり前のことをしただけだけれど、滅多に「ありがとう」と言われない仕事だけれど、だからこそ「ありがとう」のコトバは貴重で重いって私は知っている。
その勲章に恥じないように、生きていこう。

*1:勿論本当の理由はそれだけじゃない。