my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

11月最初の土曜日は

11月最初の土曜日といえば、毎年わたしには待ちこがれている方がいる。これは2002年11月3日の日記。読み返してみて、今年も全く同じような11月最初の土曜日を過ごしたわけだ、と苦笑。

吐く息が白い朝が訪れるようになると、わたしはずっと、ある人のことを考えるようになる。冬にしかやってこない彼。
今年は、11月になったらやってくると、郵便受けに知らせがあった。昨日、11月最初の土曜日。
わたしはその人を逃すまいと、外の物音に聞き耳を立てていた。朝からまだかまだかと、そわそわしながら彼を待つ。
今日を逃したら、次の土曜日。でもそれまで待てそうもないのだ。どうしても今日、会わなくてはならない。
週末なら、ちょっとした買出しにも行きたいところだけれど、彼が来るまでは、家にいなくてはならない。彼と出会えず、すれ違うことが心配でならない。たかが1週間の辛抱と人は笑うだろうか?
けれどもわたしには、彼と会えずに過ごす一週間なんて、長すぎる。このところ頻りに彼を思い出し、ずっと、ずっと、気まぐれな彼を、待っていたのだから。

去年の彼がいつもやってくる時間を過ぎたあたりから、私は急に不安になり、居ても立ってもいられずに、玄関先に「目印」を置くことにした。
これはまるで幸せの黄色いハンカチ、かもしれないと、苦笑する。わたしのハンカチは黄色ではなくて鮮やかな赤だけれど。
彼を呼び止めるための、彼に自分から近づいてもらうための、<空っぽの私を満たして欲しい>という、これは切ない求愛の暗喩なのだ。

しばらくして家のチャイムが鳴った。彼の気配はなかったので、新聞の勧誘かもしれないと期待せずに出ると、そこに、彼が微笑んでいた。
私の口から、「ああ〜、よかった。気づいてくれて! 朝から待ってたんですよ」と、声が出る。
「忘れませんよ、お客さんのことは」
彼はにっこり笑って、玄関先に置いた赤いポリタンクを指し示す。中にはなみなみと灯油が満ちてずっしりと重い。
「お支払いはどうします?」
「あ、今年もチケット買います!」

そして彼は「イッツ・ア・スモールワールド」のメロディーを軽やかに奏でながら、私の前を過ぎていくのだった。

要するに灯油の巡回販売なんですが。
今年はチケット代にビックリしました。いつもなら一万円でお釣りが来るのだけれど、今年は一万三千円!!! 三割増しですよ。石油が高騰しているとは噂では聞きながらも、普段車にも乗らないので、まったく実感していなかったのです。
今年は電気カーペットとか上手に利用しないとなぁ。

それにしても三年前の日記を読んだら、同じ頃にやはりウィルスに感染して瞼が腫れただの、皮膚科に通っているだのと書いてある。やっぱり初冬は調子が悪くなるらしい。毎年意識もせずに同じことを繰り返しているんだなぁ、と、学習しない自分に呆れた11月の休日である。