my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

あるようなないような

あるようなないような (中公文庫)

あるようなないような (中公文庫)

うつろいゆく季節の匂いがよびさます懐かしい情景、日々の暮らしで感じたよしなしごとあれこれ―。うつつと幻のあわいの世界をゆるやかに紡ぎ出す、不思議の作家の不思議の日常。じんわりとおかしみ漂う第一エッセイ集。


うん。面白い。不思議なことに、川上弘美の筆は、小説よりも、エッセイの方がずっと幻想的に感じられた。ありふれた日々を描いたはずのその中に、ぽっかりと口を開けた異次元がいくつもあって、ふと彼女の手招きに誘われるかのような不思議な感覚。誘い込まれてみれば、得も言われぬ懐かしさや可笑しさや悲しさや寂しさや恋しさが最後の一行を読み終わると、すっと糸を引くように残っている。
こんな風に日記を書きたいと、こんな姿勢で書けば楽しいのかな、とふと思う。嘘でもなく真実でもなく。現実でもなく幻でもなく。それこそ、あるようなないような、そんな日々を綴れたら、楽しいかしら、とふと思う。


しかしそれにはこの性格矯正も含めて、もろもろややこしい修行が必要だな。うん。