my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

雨のお迎え

駅を出たら信じられないくらいの豪雨だった。雨が勢いよくアスファルトを叩き付け、飛沫で薄く煙るほど。会社を出たときは晴れていたので何も持たずに来てしまった。どうしようかなと迷っていると、ちょうど携帯電話が鳴って娘が「お迎えに行く!」と言い出す。「いいよ、危ないよ」と言うと悲しそうな声で「うん、わかった…」としょげている。多分一時のことで、もう少し待てば雨は弱まるとも思えるのだけれど、さすがにタクシー乗り場までにも行き着けそうにない。「じゃあ、雨合羽着て、気をつけて迎えに来てくれる?」と言うと「うん!」と嬉しそう。いつもわたしが迎えに行くので、娘が迎えに来てくれるというのは始めてかもしれない。成長するもんだなぁと思ってみたり。思えば、幼稚園から、お迎えに来てもらう、というのはほとんど経験がないわたしは、誰かが迎えに来てくれると言うことがほっこりと嬉しかったり。

駅前のビルの前で娘を待つ。シャワーのように打ち付ける雨。同じように出るに出られぬ雨宿りの人が沢山。このところよく降るなぁと思う。きっとこんな雨なら一瞬で濡れるのだろう。そしてもうずぶ濡れになったら、どうなってもいいや!というような境地になったりするんだよ、と過去あった記憶を思い起こす。まるで泥んこ遊びのように最初はこわごわしているのに、ある程度濡れるともうどうでも良くなって笑ってしまいたくなるものだよな、と。あれはやけくそのなせる技だろうか。
呆れるほどの激しい雨が10分もすると穏やかになり、ちょうど向かい側から歩いてくる娘の姿が見えた。黄色い雨合羽。水色の傘。手にはわたしの傘を持って、てくてくと歩いてくる。「ごめんね」と駆け寄って、一緒に帰る。あの一番雨の激しいときに迎えに来た娘の方がよっぽどしんどかっただろう。でも、言いつけを守って完全防備で来てくれたので、ずぶ濡れにはなっていないようだ。受け取った傘を広げると、中からパラパラと雨滴が落ちた。閉じた傘の中にまで入り込む雨だったんだろう。ごめんね、ありがとう。