my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

夜の海と花火と夜景

北海道は快適で現地の人たちは暑い暑いと言ってはいても、東京暮らしに慣れたわたしと娘には「どこが暑いの?」といった感じ。未だ添い寝が必要な娘は母に任せ、窓を開けて夜風を感じながら、自分は一人で手足を伸ばして眠る幸せ。何もしなくても食事が出てきて、洗濯してもらえる、この優雅さ。母とキッチンに立ち、互いに仕入れたレシピを披露し料理を作ってあげる幸福。帰る日の朝には肌寒く、何故自分の分のカーディガンを持ってこなかったか、とまた支度下手を反省するものの、東京は暑いだろうと開き直る。別れ際、いつも涙ぐむ母の顔といつものように気難しそうな父の顔を見てわたしも思わず胸がいっぱいになってしまう。そしていつものように娘も別れを惜しんで飛行場までめそめそと泣く。いつもの帰省、いつもの光景。でも何度繰り返してもこの胸の痛みは飽きることはない。

午前中の便に乗り、お昼には羽田に着いた。飛行機を降りて、札幌と東京の気温差12度。慣れてはいるが、閉口はする。
羽田空港内のお店で一休みして、このまま帰るには勿体ないので、東京湾大華火祭に立ち寄ろうと決意する。羽田でポケモンスタンプラリーのスタンプを押し、モノレールを途中下車して天王洲アイルでスタンプを押し、浜松町でスタンプを押し、コインロッカーに荷物を預け、大門駅まで歩く。勝ち鬨駅を降りると人の流れが出来ていて、晴海の第二会場まで案内なしでも流れ着いた。場所を取り、レジャーシートと虫除けスプレーを調達し、娘を寝ころばせて空港で買ったおもちゃで遊んだり、食べたり、携帯でメールしたりして過ごす。じりじりと暑い湾岸と時折吹く海風に体が慣れていく。

夜の帳が降りて花火が打ち上げられる。待ちわびていた人の湧き上がるような歓声。大輪の花が幾つも幾つも夜空に開く。これでもかこれでもかと打ち上がる見事な花火には拍手が上がる。去年はその混雑具合に負けて、ここにくることを断念したのだが、今年は娘に見せてあげられて良かったと思う。会場を早めに退散し、水上バス日の出桟橋経由で帰宅するというアイディアをメールで教えてもらったので、名残惜しく何度も振り返りながら乗り場まで歩いた。途中から景色が非常に良くなり、水上バス乗り場に入ると、人混みは少なくなり、目の前には東京湾とレインボーブリッジと一層大輪の花火が上がる。順番を待ちながら花火に見惚れていると、乗り場に近づくにつれ、一層音は大きくなり、煙に花火が霞むほど近くまで来た。大きな花火の時にはパラパラと空から紙吹雪のように花火の欠片が降ってくる。待っている間に花火は終わり、終了のアナウンスが流れたところで折良くチケット売り場に到着した。
水上バスは人満載で、いかにも重そうなので、娘は沈んだらどうしようとしきりと心配している。夜の海に行き交う水上バスや客船や屋形船の灯り。向こう岸にはお台場の夜景が見える。まるでお登りさんのように「ああ、東京だ〜。テレビで見た東京の景色だ〜」と思ってしまう(笑)。

重いキャリーバッグを引き摺りながら満員電車に乗り、帰宅した頃には夜もとっぷり更けていたが、それでも楽しかった。しっかり疲れたけれど、たまには人混みの中に入るのも、夜の匂いを嗅ぐことも、忘れていたデートスポットを巡るのもいいものだ。