my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

暗闇の囚人


暗闇の囚人 (ハヤカワ文庫NV)

『暗闇の囚人』 フィリップ・マーゴリン作 田口俊樹訳 ハヤカワ文庫NV ISBN:4150409145


読み進めて、作者の術中にまんまと嵌る。もう、賞賛の言葉なんて出尽くして思いつかない。確かに言えることは、二作読んでわたしの中でのこの作家の位置が確実になったということだ。マーゴリンはプロット派と言われるが、その力量はただ『黒い薔薇』と『暗闇の囚人』を読むだけで十分に伝わるだろう。
前作の期待を持って読んでいると、作者は既にそれを軽く裏切っていき、読者に新たな驚きを与えようとする。それはキャラクターの作り方や、話の進め方などのなかなか作者自身が変えにくいクセのような部分ですらもそうだ。今回の冒頭は少しまだるっこしい法廷シーンが多く、勝手が違う気がしていると、後半はあっという間に持って行かれる。残り40ページで読むのをやめられる人がいたら、それはよっぽどの急用か体調不良しか考えられない。マーゴリンのマーゴリンらしさとは、ここかもしれない。特に今回は最後の1ページまでおろそかにできない。


わたしはいつもこれから読む人にも影響がないような感想を書いているつもりなのだが、本作で思ったことを書くと完全にネタバレになってしまうので、今回は書けません。
なので、ハヤカワ文庫が探しにくいとか、作家名が見つけにくいとか、良くあるタイトルっぽい*1とか、んなこた、この本を読まないもったいなさと比べたらたいした苦労じゃないことは保証します。だから、これを買ってきて読みましょうね。Aさん。(と、私信になってしまう)

*1:ちなみに原題はAfter Dark