こころの処方箋
河合隼雄著『こころの処方箋』*1を読んだ。
いや、読んだ、と簡単に言っていいものかどうか、書きながら悩んでいる。ページ数も多くないし、言葉は平易だし、字面だけを追えばあっという間に読めてしまう。でも、この本で書いてあることは、どれも心の端っこに引っかかってくるようで、書いてある言葉を本当に理解したのか、体感できたのか?と、つい自問自答してしまう。そんな本だった。
かねてから同じように思っていたことも、納得することも、もちろんあるのだけれど、それだけではないようにも思えて。言葉の奥にもっと沢山のことが示唆されている、そんな気がして。
かねてから思っていたことはさらりと水のように流れていくけれども、心が何かをもっと汲み取りたがっているような、不思議な感じ。どんな人でもどんなシチュエーションでも通じるように例示なども極力控えてあるせいか、自分の心のどのようなときにも応用できるようで、軽く読めるのにもかかわらず読み終えた、という気がしない。
筆者の与える処方箋は心を楽にするいわゆる「呪文」のようなものだ。
筆者は「この中でひとつでも気に入った言葉が見つかれば幸せだ」と書いているけれども、こころでそっと呟くことで、視野狭窄に陥らずに済むのかもしれない。
これは折に触れては手に取り読み返してみたくなる、そんな本だろう。
きっと読み返すたびごとに、心に効く呪文は違うのかもしれない。