昭和侠盗伝
- 作者: 浅田次郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/03/19
- メディア: 文庫
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天切り松闇がたり第4巻。いくら忙しいと言っても、読む気がなくなっていても、浅田次郎は別腹。
すらすら読ませちゃうし、所かまわず泣かせちゃう、まさかの筆力。本を読んでて電車で泣いちゃうという初体験をさせた憎いお方なのです。*1
相変わらず、兄さん方姉さん方、揃いも揃ってかっこいいです。少しずつ暗い時代に向かっていくのですが、少しずつ衰えながらもやはりその行き様が美しいです。
かっこいいってことは、「無理」をしなければ産まれないものなんだって、つくづく思います。どこかの漢字の読めない政治家が「矜持」なんて言葉をたやすく使いましたが、あれは誤用です。矜持とは人に見せるものじゃなく、己の胸一つに掲げるものなんですよ。歯を食いしばって、誰かのために、さらりとね。
常兄さん、精巧な機械のような底知れないあなたの知性で放りだした「屁のつっぱり」は見事なものでした。最近テレビで聞いたどこぞの格闘家の言葉とは比べるのすらおこがましいほど。腕よりも頭脳の方がよほど恐ろしく、悲しい。それを思い起こさせてくれるのは兄さんを置いて他にはありません。
栄二兄さん、格好良いという言葉はあなたのためにあるのです。誰か一人のものになるには勿体ないので敷居の高いまま、女子の夢の中であなたは人生を全うするのでしょう。格好良さと悲しさを抱いて生きていくのが、神様に与えられた選ばれた人の運命なのかもしれません。いよっ、黄不動!
おこん姉さん、その美しさ、凛々しさと引き替えにしたものが数多あるからこそ、姉さんは美しくあり続けるのです。でも男を見る目はもうちょっとあった方がいいかもしれない、と思いました。す、すみません。そういうことは理屈じゃないっすもんね。わたしが野暮でした。でもいつも素敵すぎて敷居の高い姉さんが今回なんだか愛おしかったです。
そして虎兄さん、大好きです。あなたが間違って頷いてくれようものなら、わたしは鍋釜背負って嫁に行きたいです。いや、一生片思いでもいいです。真心は与え甲斐のある男に与えてこそ真心になるのですから。片思いですら幸せに思える、そんな男なんて出会えるだけで幸福ってもんです。
こんな時代だからこそ、こういう話をより多くの方に読んで欲しいです。
*1:天切り松1巻の松蔵の名言「俺ァ男だ」にて、やられました。