my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

Cherry Forest

都心を離れ、一駅一駅毎に、電車のドアから入ってくる空気が変わっていく。休日の多摩川べりでは野球や釣りを楽しむ人がいる。川を一つ越えるたびにまるで硬水から軟水に変わるかのように空気の味が変わり、車両に満ちていく。心が元気になっていくのを感じる。空が高く、陽射しが暖かくなっていく。駅を降りて歩き出すと、緩やかな坂道には人影もまばらで、時折お供えの花を持つ人の姿や、老夫婦が仲良くハイキングに向かうほほえましい姿が見られるだけ。シーズンオフの、ぽっかり空いた休日。
門を入り、清流が流れ鬱蒼とした山に入るとほどなくして桜の花道。染井吉野は散っても、関山、普賢象、福禄寿。八重桜が咲いていた。一面が桜色に染まるというほどではないけれど、終盤の桜を見ながらのんびりと山道を歩く。風の音、虫の音、木々のざわめき。遠くに見えるビル。緑は人にエナジーを与えてくれる。ただ、そこにあるだけで。
山間のベンチで休憩していると一陣の風が吹き、八重桜はそれはそれは豪勢に花吹雪を散らした。休憩していた人が一斉に溜息をあげる。散る桜は悲しいものと思っていたけれど、こんなにも豪勢なら、けっして悲しくはない。まるでこちらまで祝福されたかのように、わたしは嬉しくなる。今年の桜は急に咲いてパッといなくなってしまったけれど、桜には色んな種類があって、一つ一つ開花時期が違うのだ。山に咲く終盤の桜は豪華で艶やか。

途中、「千里香」という桜の木を見つけ、千里まで香るのかしら、と思い、真剣にクンクンしていると、通りすがりの人に笑われてしまった。すみません、こういうところ子供なんです。わたし。残念ながら花の香はとんでしまっていたけれど、花は満開で美しかった。
きっと数週間前に来たなら、どれほど見事だったでしょう、と思いながら、2時間の散策を楽しんだ。ちょうどよいお散歩。こんな素敵な場所を教えてくれた友人に感謝。ありがとう。さすが!とここで密かに褒めてあげましょう。
おみやげに、アクリル樹脂に封じ込めた桜の花を買ってきました。個人的に枝垂れ桜が好きなので、八重紅枝垂が入ったのを。

ちなみに、わたしが一番好きな桜は雨情枝垂。IDがlluvia(雨)ですしね。