my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

『サンセット大通り』Aチームを観にいく 

  • at 赤坂ACTシアター
  • 2015年7月19日 マチネ
  • キャスト
    • ノーマ・デスモンド        安蘭けい
    • ジョー・ギリス          平方元基
    • マックス・フォン・マイヤーリング 鈴木綜馬
    • ベティ・シェーファー       夢咲ねね
    • アーティ・グリーン        水田航生
    • シェルドレイク          戸井勝海
    • セシル・B・デミル        浜畑賢吉
  • 作曲    アンドリュー・ロイド=ウェバー
  • 作詞・脚本 ドン・ブラック、クリストファー・ハンプトン
  • 演出    鈴木裕美

東京前楽。
昨日の観劇の感想を娘に話していたら、突如「私も観に行く!」との発言。そういうことなら、学生割が合ったはず、当日券もあったはずと教えて2日連続での観劇となりました。今回は2階席からの観劇となりましたが、休日なのに、前楽なのに、2階席がら空き・・・。もったいない!

せっかくなので2階からジョーがどこに潜んでいるかを観察していました。あー、なるほど、そこにいたのね!とリピーターならではの愉しみもあり。
出はけがとても自然なので、よくよく注意しないと気付かない。あと、演者さんがみな細かい演技をしてくれているので、すごく色々見どころがあり。


本日は初演に引き続き、安蘭ノーマ。さすがの安定感。漂う貫禄。
ノーマという大女優を体現できるのは、元宝塚男役トップとか、人生で一度はちやほやされたことのある女優とかなのかもしれない。シンプルなセットの中、階段に立てばそこはノーマの豪邸に見える、そういう気迫みたいなものが必要なんだと思うわけです。曲の中にもある「私を見て!」というオーラ。
パラマウントに行くときの安蘭ノーマは、人から注視されて、「あれ?なんでわたしは恐れているの?」となりながら、「おかしいじゃない、ここは私の場所なのに」とかぶりを振って通常運行へ。ここ、濱田ノーマは人の視線を恐れているようで、見ていて痛々しかったんです。必死で自分を奮い立たせていて。「見えているのに見えていない」という女の野太さを感じさせる安蘭ノーマに、ああ、これが原作に忠実なAパターンなのね!と納得。
対する平方ジョーはふわりとしている。圧のあるノーマにたじたじしつつ、振り回される様子がコミカルで笑える。水田アーティ、夢咲ベティーと友達としてすんなり馴染むジョー。そして人のよさそうな、それでいて鈍そうな水田アーティから平方ジョーにベティーが惹かれる気持ちは自然に分かる。お似合いの二人。
柿澤ジョーにあったのが、計算とノーマに対する憐憫とよくしてくれたことへの恩義だったとしたら、平方ジョーはノーマをハリウッドで成功した女優として第一に尊敬している、そういう類の愛情なんだと感じました。
そして、愛されることを当たり前のように受け止められる安蘭ノーマは、お茶目で可愛らしくもある。可愛くて、甘えん坊で、どこか滑稽で笑わせてくれる。


サスペンスって、この笑うという行為を挟むことがすごく大事なんだと思う。いったん身構えていたものを弛緩させて、思いもかけず緊張させる、この配分が良いほど、上質のサスペンスになりうるんだと思う。
ラストは、メイクはむしろ薄い感じで、階段から降り、マックスから「宮殿のセットです」と言われて「そうだったわね」とにたりとほほ笑む。端正な狂気だった。

これぞサンセット大通り。バランスが良いなと感じた舞台でした。